空手と孤独
小学4年生から、空手を習うことになりました。いじめにあっていた私に、自分を守る術を身につけさせたいという親の意向でした。
しかし、私は昔から人を殴るという行為や感触が嫌いでした。嫌悪感すら覚えるほどに。本当はダンスを習いたかったのですが、厳格な父は聞き入れてくれず、そのまま空手道場に通わされ続けました。
道場には、学校にいるいじめっ子のような子が大勢いました。見学の日、双子だということで目立ち、ひどく緊張したことを覚えています。
空手が嫌だった理由は、もう一つありました。トゥレット症候群のせいで、学校、家、そして空手道場と、馬鹿にされる時間、気を張り詰める時間が増えたことです。
当時、私の症状はまだ比較的軽く、音声チックが中心でした。一方、双子の兄は幼少期から運動チックも伴い、症状が重い傾向にありました。私が工夫して症状を隠しても、兄のチックのせいでバレて、いじめられることがありました。
トゥレット症候群には誘発性があります。同じ症状を持つ人が近くにいると、症状が引き起こされやすいのです。そのせいで、落ち着いていた私も急に発作が出ることが多々あり、笑いものにされました。
次第に、兄のことが憎くなりました。一緒にいたくなくなり、やがては拒絶するようになりました。今となっては、兄をひどく傷つけてしまったと思います。
当時の私は、いじめられないように必死でした。意地を張り、強い口調で話し、子供なりに工夫していたのに、兄がその努力を一瞬で台無しにしていく。それが耐えられなかったのです。
兄には学校で常に友達のような話し相手がいました。それなのに、私は学校でも家でもずっと孤独に耐えていました。「なぜこいつは空気も読めないのか」。父と兄への心の溝は、日に日に深まっていきました。
次第に学校では、「弟の方がマシやな」「兄貴の方がやばい」と言われるようになりました。比べられることにも嫌悪感を覚えました。大きな声で馬鹿にされ、それを聞いている周りがどう思っているのか。考えるのも怖かったのです。
いじめられた後は、いつも兄が癇癪を起こしました。冷静で我慢強い私とは対照的に、兄はメンタルが弱く、すぐに喧嘩をしていました。自分の気持ちに素直な兄が、妬ましく感じる部分もあったのだと、今では理解できます。しかし当時は、家で同じ空気すら吸いたくありませんでした。
親は何も知りませんでした。いじめにあっていることを言えませんでした。心配をかけたくなかった。言ったところで、どうせあしらわれるだけだと思っていました。
今、当時の自分が目の前にいたら、抱きしめてあげたいと思います。

