汚言症(おげんしょう)とは?
~ふざけてるわけじゃない。本当は、自分でも止めたい言葉の衝動~
■ 汚言症ってなに?
汚言症(おげんしょう)とは、自分の意志とは関係なく、「ばか」「死ね」「いやらしい言葉」などの不適切な言葉が、勝手に口から出てしまう症状のことです。
本人は思ってもいないことを言ってしまうので、ふざけているわけではありません。
これは神経の発達の問題によるもので、「トゥレット症候群」という障害の一つとして知られています。
たとえば、人がたくさんいる場所で急に大声で暴言を言ってしまったり、周囲をびっくりさせてしまうこともあります。でも、これは本人の性格や気持ちとは関係がなく、自分でも止められないのです。
そのため、汚言症のある人は「言いたくないのに言ってしまう」「言葉が出るたびに苦しくなる」と悩んでいることが多いのです。
■ どんな人に起きるの?
汚言症は、子どもから大人まで、誰にでも起こる可能性があります。
特に、10歳前後の子どもにあらわれやすいことが知られています。
また、汚言症だけでなく、まばたきを繰り返す・首を振る・咳をするなどの**「チック」と呼ばれる動き**や、ADHD(注意欠如・多動症)や自閉スペクトラム症など、ほかの症状といっしょに見られることが多いです。
■ 誤解されやすい現実
汚言症のある人は、学校や職場、公共の場所などで
- 「ふざけている」
- 「空気が読めない」
- 「わざとやっているんじゃないの?」
といった誤解を受けやすく、つらい思いをすることが多くあります。
でも、本人は**「言いたくない」「迷惑をかけたくない」と思っていて、実際には「どうしても止められない」ことに苦しんでいる**のです。
日本ではまだあまり知られていない汚言症ですが、海外では有名なスポーツ選手や俳優、アーティストなどにも当事者がいて、理解と支援が広がっています。
■ 治療やサポートはあるの?
今のところ、汚言症を完全に治す薬や治療法はありません。でも、いくつかの方法で症状をやわらげたり、自分らしく生きるサポートを受けることができます。
たとえば、
- 認知行動療法(CBIT:包括的行動介入)
- カウンセリングや精神的サポート
- 学校や職場での環境調整
- 周囲の理解と協力
などがあります。
汚言症の人が安心して暮らせるには、まわりの人の理解と、あたたかいまなざしが何よりも大切です。
■ 最後に
汚言症は、「見た目」ではわかりづらく、まわりの人に誤解されやすい障害です。
でも、「ふざけてるわけじゃない」「本人も困っている」ということを、一人でも多くの人に知ってもらいたいと思っています。
もし、まわりにそういう人がいたら――
驚かず、責めず、「大丈夫だよ」と寄り添ってあげてください。